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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)2112号 判決 1981年2月23日

原告

山﨑徳太郎

右訴訟代理人

網野久治

上田吉彦

被告

右代表者法務大臣

奥野誠亮

右指定代理人

石川善則

外四名

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一本件買収・売渡処分とこれに伴う登記手続の経緯及び原告の本件土地の所有権取得の経緯に関する請求の原因1ないし6の各事実並びに請求の原因7の事実のうち、原告が訴外鎌田から本件土地が「八七番の二、山林三反七畝一九歩」の一部であるとして関連訴訟を提起されたこと、右訴訟において、原告は本件土地が「八七番の一、畑二反九畝九歩」の一部であると主張して争つたが、結局、原告の右主張は容れられず、訴外鎌田の勝訴判決が確定したこと及び右判決の確定により、右「八七番の二」を昭和三七年四月一八日に訴外工藤から買受けて同月三〇日に所有権移転登記を経由した訴外鎌田に対し、原告が本件土地の所有権を対抗することができなくなつたことは、いずれも当事者間に争いがない。

二ところが、本件土地が登記簿上のどの地番の土地に該当するかについては当事者間に争いがあり、原告は、関連訴訟の確定判決認定のように「八七番の二、山林三反七畝一九歩」の一部であると主張し、被告は、本件買収・売渡処分に伴う登記手続どおり「八七番の一、畑二反九畝九歩」の一部であると主張するので、ここでは、仮に本件土地は原告主張のとおり右「八七番の二」の一部であるとの仮定に立つて、原告の主張する被告の責任の有無について検討を進めることとする。

1  原告の第一次的主張について

請求の原因8の(一)の(1)についての判断はさておき、まず、抗弁(1)(除斥期間)について検討する。

民法七二四条後段の「不法行為ノ時ヨリ二〇年」の期間の趣旨(消滅時効か除斥期間か)については、当裁判所は、同条前段の三年の消滅時効が損害及び加害者の認識という被害者側の主観的事情に左右される浮動的なものであることに鑑み、被害者側の主観的事情を要件としない画一的基準を定めることによつて、法律関係の速やかな確定を図ろうとすることにあるものと考えられること及び二〇年という期間は一般の消滅時効の期間を倍加したもので、実際上もかなりの長期間であつて、この上にさらに中断を認めて期間の伸長を許す結果となることは、右に考察した規定の趣旨に反すること等からすれば、同条後段の二〇年の期間は除斥期間を定めたものと解するのが相当であると思料する。また、同条後段の右のような趣旨に照すと、「不法行為ノ時」とは、損害発生の原因をなす加害行為がされた時をいい、右加害行為がされた時とは、字義どおり加害行為が事実上された時と解すべきであつて、当該加害行為のされたことが被害者に認識された時若しくは認識され得るような外部的表象を備えるに至つた時又は右加害行為によつて損害が発生した時と解すべきものではないというべきである。

そこで、これを本件についてみてみると、市農地委員会及び千葉県知事が訴外山﨑小作地に関して登記嘱託をし、千葉地方法務局船橋支局がこれを受理したのが昭和二七年三月二〇日であることは前記のとおり当事者間に争いがなく、本訴が提起されたのが昭和五三年三月七日であることは本件記録上明らかであるから、右登記嘱託及びその登記嘱託の受理の時から本訴提起までにすでに二〇年以上を経過している。

原告は、誤つた登記嘱託をし、その登記嘱託をそのまま受理したという加害行為は右登記嘱託及びその登記嘱託の受理の結果誤つた登記がされて登記簿がその状態で登記所に備え付けられている限り継続していると解すべきである旨主張するが、登記嘱託及び登記嘱託の受理という行為は、嘱託及び受理という一回の行為によつて完了するものであつて、原告主張のように解すべき理由はないから、右主張は採用しない。

次に、再抗弁(権利濫用)について検討するに、民法七二四条後段は前記のとおり除斥期間を定めたものと解するのが相当であるから、「援用」という行為を観念する余地がなく、原告の右主張は、その前提を欠き、主張自体失当である。

してみると、仮に本件買収・売渡処分に伴う登記嘱託及びその登記嘱託の受理に過失があり、原告主張の損害賠償請求権が発生したとしても、すでに民法七二四条後段により消滅しているものというべきであるから、原告の第一次的主張に基づく本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないといわなければならない。<以下、省略>

(伊藤博 宮﨑公男 原優)

物件目録<省略>

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